中国に浸透するコーヒー文化
≪ネスレなど雲南省で原料調達拡大≫
中国でコーヒー文化の浸透に伴い、雲南省を中心に国内生産が拡大している。スイスの食品大手、ネスレや米コーヒーチェーン大手のスターバックスが雲南省でのコーヒー豆調達を強化しており、2011 年における雲南省プーアル市のコーヒー豆栽培地面積は284 万1,400 平方メートルと2年間で倍増した。
茶葉の産地としても有名な雲南省プーアル市。近年、コーヒー豆を栽培する農家が増えており、空前のブームに沸いている。中国中央テレビ(CCTV)の報道によると、同市で栽培されたコーヒー豆の価格は現在、1キログラム当たり34.5 元(約440 円)で取引されており、ここ3年間で2.2 倍上昇した。
需要拡大を受け同市政府も昨年10 月、 新産業として育成支援するため「珈琲産業発展弁公室」という専門部署を新設した。米コーヒーチェーン大手のスターバックスは昨年後半、同市内のコーヒー豆加工会社の株式51%を買収した。スターバックスはコーヒー豆の調達を南米地区に依存してきたが、中国市場向けに現地調達を拡大することで調達コストを低減するのが狙い。
■5分の1をネスレが購入
雲南省珈琲業協会によると、10 年における雲南省のコーヒー豆栽培面積は3.2 万ヘクタールで、全国の98%を占めた。11 年の生産量は3万8,000 トンに達した。コーヒー豆の栽培は北緯25 度から南緯25 度までの熱帯、亜熱帯気候の土地でなければ難しいため、世界2位の生産量を誇るベトナムと国境を接する、雲南省に栽培地が集中している。
コーヒー豆の国際価格が高騰し続けていることも追い風となり、雲南省へ買い付けに訪れる企業も増えた。ネスレもその一つで、数年前に買い付けを開始してから徐々に調達規模を拡大し、2011 年には雲南省全体の5分の1に相当するコーヒー豆を買い占めた。
ネスレ農芸部のウォルター経理は「コーヒー豆を買い付ける雲南省の農家の数はこの6年間で5倍にまで増やした。今後も増やす計画で、今後5年以内に調達量は現在の2倍になる」と見込んでいる。また業界関係者も「雲南省のコーヒー豆生産量は、20 年には20 万トン以上に達する」という見方を示している。
■チェーン店も拡大へ
世界全体におけるコーヒーの消費市場規模は現在、年間約12 兆元と推算されている。このうち最も規模が大きいアメリカが年間約3兆元であるのに対し、中国は年間700 億元とまだ小さい。ネスレの調査によると、中国人1人当たりのコーヒーの年間平均消費量はわずか約3杯で、日本の約330 杯、アメリカの420 杯と比べ極端に少ないことが背景にある。
ただ都市部などでは大手コーヒーチェーンの進出によってコーヒーを飲む習慣が徐々に広まっており、上海市住民の年間平均消費量は全国平均の10 倍となる、1人当たり約30 杯に上ると報告されている。
北京国際珈琲行業協会は中国のコーヒー消費量は毎年約15%のペースで上昇しているとして、内陸部や地方都市を中心に高い潜在需要を見込んで出店ペースを速めるコーヒーチェーンも少なくない。
スターバックスは先日、中国で展開する店舗数を現在の約550 店舗から15 年までに1,500 店舗に増やすと発表した。また華潤集団傘下のコーヒーチェーン、パシフィックコーヒーも、15 年までに1,500 店を目標として掲げている。
まだ発展途上で市場規模は小さいものの、中国でコーヒーを飲む習慣がさらに普及すれば、13 億人という膨大な人口を抱えている点から、その市場規模は大きくなりそうだ。