最新コロンビア共和国報告(20010.08)
ウイラ県 ネイバ市を流れるマグダレナ川
サプライ状況サマリー
2010年1-6月(FNC発表生産量:4.04百万袋)
1月:ブロッカ・さび病被害拡大
2月:ブロッカ・さび病被害拡大開花良好多雨
3月:ブロッカ・さび病被害拡大スクリーンサイズ小多雨
4月:ブロッカ・さび病被害拡大スクリーンサイズ小多雨
5月:ブロッカ・さび病被害拡大スクリーンサイズ小多雨
6月:さび病被害拡大スクリーン改善多雨
2010年7月-12月予想
FNC:6百万袋以上(トータル10.04百万以上)
CARCAFE:4.3百万袋(トータル8.3百万)
収穫年度では7.9百万
SKN:4.5〜5.5百万袋(トータル8.5〜9.5百万)
*FNCは増産傾向に入るというが、プライベートシッパーは懐疑的。
*産地(ウイラ)を見る限り、本格的な増産傾向にはならないと考えることが
自然。(ウイラよりEJECAFETERO(中部でコロンビアのコーヒー生産
の40%)エリアの病虫害の方が深刻といわれているため)
2011年1-6月予想
基本的には予想は困難であるが、FNCは楽観的である。プライベートシッパー2社は慎
重な姿勢。とくにミタカの開花次第であり、今年2月からの長雨と多雨により、以下懸
念が発生している。
1.降雨により、農薬散布が出来ない→病虫害により被害の拡大→植替え発生
2.乾季がなく開花不良となる可能性がある→ミタカ(2011年4-6月)減産
サプライヤー各社コメント
FNC
サプライ状況に関しては、6月の生産が上向き、7月以降も増産傾向に入ったという認識。
特に9月末からはある程度の数量が出てくると予想している。1-6月の生産量は4.04百
万袋となった。7-12月の生産予想に関しては、FNCとしてのオフィシャルな発表は7月
末に発表予定であり、個人的な見解とのことであるが、7-12月で6百万以上(通年で
10.04百万以上)であると考えている。
2010年1-3月に関しては大減産。3-6月に関しては、ブロッカが多かった(特にエヘ・
カフェテロエリア)。また4月以降はスクリーンが小さく、豆粒の大きいSUPREMOが
大減産となった(通常は30〜40%がSC17UPであるが、10%台となる。またSC14
以下が極端に多く7〜8%)。
通常、生産量の90-95%を輸出するが、3-5月はブロッカが多いため、輸出規格を満たす
ことができず、6月以降に生産されたものを混ぜて輸出規格を満たさなければならない状態。
6月の生産はブロッカ被害、スクリーンサイズともに回復してきており数量も多い。7月以
降もその傾向が続くことを予想している。今年の2月〜3月の開花が素晴らしく、特に9
月下旬以降の生産は期待できるとのこと。
CARCAFE社 プライベートシッパー(輸出業者)
生産概況に関しては、施肥不足・天候異変により7月以降もそれほど生産は上がらないと
数量的にはネガィブな予想。2009/2010クロップは生産量:7.9百万袋+密輸:0.7百
万袋程度と見込。7-12月の生産量は4.3百万袋と予想しており、FNCの予想よりかなり
少ない数字。メインクロップは10〜20%の増産を見込んでいるが、昨年の数量があまり
にも少ないため、本格的な回復にはならないとのこと。生産数量は少ないが、現在の国内
相場は高いため、生産者は収支的にはバランスが取れている状態であるが、農園のメンテ
ナンスをしている生産者は少なく、大きく数量が伸びる見込みは少ない。ディファレンシ
ャルが落ちた場合、コーヒー産業の崩壊(クラッシュ)の可能性もある危険な状態との認
識。
SKN CARBECAFE社 プライベートシッパー(輸出業者)
産地状況に関しては、5月、6月の降雨が多く、実の成熟には良いが、病虫害の蔓延が心配
される。7月も雨が降り続いており、8月にはラニーニャが強くなるとの予想で一段と降雨
量が多くなることが予想される。病虫害の蔓延だけでなく、開花不良によりミタカクロッ
プへの影響が出る可能性がある。今年の秋口からのメインクロップは、過去5年間遅れ気
味であったが、今年は例年より早いだろう。2010年の通年での生産量は8.5〜9.5百万
袋程度であろうとのこと。7月〜12月の生産は4.5〜5.5百万袋を予想している。
産地(ウイラ県)サマリー
*メインクロップの収穫は9 月頃からスタート見込で、最近では早い収穫となる
*実のつきは比較的良好(2/3 月の開花が良かった)であるが、同じ区画でも
かなりのバラツキがあり、10 分離れた農園でも状態はマチマチ。
*メインクロップは多少の回復が期待でいるが、楽観的にはなれない。
*病虫害が蔓延しており、実際の予想は困難(スクリーンダウンによる歩留まり等)
*来年のミタカ(2011 年4 月〜6 月)の生産は今後の開花次第だが、2 月からの
長雨で開花不良となる可能性あり。
(一部は開花の兆しも確認できるが限定的)
*長雨傾向が今後も続けば、病虫害対策が取れず問題は深刻化する可能性あり。
*8 月に強まると予想されているラニーニャにより、降雨量は多くなる可能性が高い。
中部ヒガンテ〜ガルソン
通常10 月〜12 月に70%の収穫が行われる地区であるが、昨今の天候異変により、昨年は1年中ダラダラとした収穫が行われていた。昨年は例年の半分程度の収穫量であったが、今年は例年並みの生産を予想している農家が多い。今年のメインクロップは例年より早く9月からの収穫となりそう。1-6 月の収穫に関しては、昨年のメインクロップの遅れで、あ
る程度の数量を当初予想していたが、12/1 月以降にチェリーの黒化(MANCHA DEHIERO)・葉の落下によるチェリーの成熟不良(さび病の急激な広がりと多雨により葉が落下し、チェリーが大きくなる前に熟してしまった)が起こり収穫量は当初見込みの30%減、またブロッカ被害とスクリーンダウン等のローグレード(パシージャ)比率が10%程度となり、輸出可能数量としては40%減となった。同じ区画でも木による結実のバラツキが激しく今後の収穫量を予想することはかなり難しい。メインクロップはある程度の数量は期待できるが、本格的な回復は難しいと思われる。
南部(ピタリト〜サンアグスチン)
この地区も昨年は減産で例年は当初見込みより30%ダウン。収穫は通常10 月-12 月に70%が集中する地区であるが、通年でフラットな収穫期となっている。中部のヒガンテ・ガルソン地区と同様の問題を抱えているが、病虫害に関しては多少広がりが抑えられていると感じる。しかし1600mの高地でもさび病が出始めていることは事実で、今後の天候 次第ではカツーラの比率が高いので、深刻化する可能性がある。特に西側斜面は西日の影響で高温となりやすく、地形によっては風の抜けが悪いため、さび病の広がりが早い場所もある。今年2月に良好な開花があり、例年より早く9 月から収穫がスタートする見込。多雨に関しては意見が分かれているが、メインクロップの実の成熟には良いとみる生産者や、病虫害が発生している農園では問題であると認識している生産者もいる。現在、結実済の果実が全て収穫できれば、生産量はある程度回復する見込。ミタカの開花のためには、乾期が必要で、長雨がこのまま続けば来年4月以降の生産に影響がでるものと思われる。
標高がやや高いサンアグスチンでも、一部さび病の被害が確認できるが、さほど深刻ではない。チェリーの成りはそこそこといった印象。メインクロップは、他の産地に比べると、ある程度の期待はできる地域。昨年の11 月に比べると実の付きは良いが、昨年確認されなかったさび病・マンチャデイエロが高地にも広がってきており、今後の天候次第では減産となる可能性がある。
総括
2010 年9 月〜12 月の収穫は既に樹上に結実しており、昨年に比べれば増産見込であるが、本格的な回復にはならないと思われる。2011 年1月〜6 月に関しては、長雨の影響で、深刻な被害が起こる可能性がある。最悪の場合は植替・カットバックが必要な区画もある。
短期的にも葉の落下が起これば、実の成熟に悪影響を与え、当初予想よりメインクロップでの減産も否定できない。また開花不良となれば、来年のミタカクロップへの影響がある。
2010 年9/10 月頃には何らかの答えがでるものと思われる。今後注視する必要がある。
病虫害に関して
1. さび病
1600m 以上の高地にも広がりが確認される。昨年11 月には1600m以下のみに確認されていたが、多雨による湿度の上昇で、高地にも被害が広がりつつある。高地はカツーラを主体に栽培している農家が多く、今後の降雨次第では被害の拡大が懸念される。時期的には7月は乾期である地区だが、12月後半から多雨で、さび病被害が広がり、雨が降りやまず薬を撒くことができない。本来なら今の時期に、銅殺菌剤(非農薬)かHEXACONAZOLE かSYPROCONAZOLEを撒けば問題は解決するが、降雨のために散布ができない状況。結実はしており今年9月からの収穫は可能であるが、葉の落下が起これば、結実している果実に影響を与える恐れもある。来年のミタカ・クロップにに関しては、開花が起こらなければ、植替かカットバックが必要となる可能性がある。
2.マンチャデイエロ(MANCHADE HIERO)
昨年12 月より被害が広がり始めた。11 月の訪問時にはまったく問題になっていなかった細菌。チェリーに直接的なダメージを与え、完熟前のチェリーを腐らせてしまう。さび病と同じく雨がやまなければ対策が取れず、今後の降雨次第で感染が拡大すれば、現在結実しているチェリーの落下という事態が起こる可能性がある。
3.リーフ ミナー
葉に卵を生み幼虫が葉を食いらす害虫。現状コントロールは出来ているが、コロンビア種・カスティージョにも被害があり、蔓延するとコントロールするのに多額のコストがかかる害虫。結実しているチェリーへの直接的な影響はないが、葉
が落下すると直射日光がチェリーあたり、実が大きくなる前に熟してしまって歩留まりが悪くなる。また葉が少ないと今後の開花へ影響が出る。蔓延すると植替えが必要となる。
4.ブロッカ
未成熟の果実に卵を生み、幼虫が果実を食い荒らす害虫。例年よりブロッカ被害は多いが、15 日毎の赤実の収穫により、ある程度はコントロールできている。ブロッカ被害は現状3%程度に抑えられているが、人海戦術でのコントロールを怠れば、被害は一気に拡大する恐れがある。ウイラは小農家が多く、農園主自ら作業にあたっているが、EJECAFETERO 等の大農園では、コストがかかるため被害はウイラ以上に広がっているとのこと。