インドネシア編(2011.03.30)
概略
1. 2010/11クロップは30%程度の減産、2011/12クロップは例年並みの予想
2. 積み遅れ、デフォルトは2,000-2,500トン程度
3. 日米欧からの新規引き合いは低調
価格の高騰が続いているマンデリンですが、原因は2010年5-9月の乾季における高温少雨に
より木がダメージを受け結実が減ったこと、加えて他産地に比べ割安感があったことから米国を中心に積極的な買いが入ったことによります。現在産地は春クロップのピークシーズンを迎えていますが今後生産量と価格はどのように動いていくのか、上記3点を軸に考察していきます。
収穫状況
全体としては減産ながらフライクロップの収量、そして来秋クロップには期待が持てる。
複数の輸出業者、生産者などにヒアリングしたところ、2011年春クロップの収穫量は例年比40-50%減、2010/11クロップ全体では30%程度の減産とみられています。現時点では産地からの供給は非常に細く、業者によってピークは終了したとするところ、5/6月をピークとするところと見方が割れていますが実際に産地を視察した結果、この見方は双方とも正しいものと思いました。
東部の生産地
南部の生産地
北スマトラ州のマンデリン産地はトバ湖の周辺に広がっており、このうち古くからの生産地である南部では既に収穫は終盤、秋クロップの収穫は9月からの予定でありそれまでの収量は多くを見込めないでしょう。逆に北部から東部にかけては未完熟の青実がしっかりと結実しており、これらの収穫ピークは4月中旬から6月となる見通しです。これは北部から東部にかけては比較的若い木が多く、乾季のダメージが南部産地に比べると小さかったことによるものと推測されます。例年であれば1ヶ月ほどずれるアチェ州との収穫ピークも今年は4-6月で一致することになりそうです。これらのことから春クロップの収穫量は2-4月に限れば大きく減産となりますが実際には収穫遅れで5/6月にまとまった収穫が見込めることや小さな青実も多く樹上に残っていることから2-8月の中期的視点でみれば15-20%程度の減産に留まるのではないかとの期待が持てます。
次の収穫ピークである2011年秋クロップは例年通り9月ごろから始まると見られていますが、年末年始にはまとまった開花があったことから収穫量に期待感を持つ生産者がほとんどでした。
市場のコレクターにパーチメントを販売する生産者
秋クロップは9月から
積出状況
3月中旬までに履行されていない契約は恐らく2,000トン以上。一部は積み期の延期で対応。
昨年10月からのマンデリンの急騰により契約不履行や積み遅れの発生が懸念されていましたが、輸出業者数社からの話を総合すると主に米国向けでの積み遅れが2,000トン以上発生している模様です。スターバックスは買付先に対して安い契約を履行させるために最長2011年12月までに月々3-6コンテナを積むという条件で積み月の延長を認めました。米国向けではそれ以外にも積み出したものの欠点豆が多く品質が非常に悪いために引取拒否となり、契約が履行できていないケースも散見されるようです。
この積み遅れは消費国から急増した引き合いに対して販売を行った輸出業者が現物の手当てを行う前に減産とさらに需給バランスの崩れが重なり、価格が急騰したことで身動きが取れなくなったことが主因と見られます。
ロシアや中国などの新興国向けとしてこれまでは国内消費に回されていたような低級品が積極的に積み出されており、このこともインドネシア国内在庫をタイトにしている一因であると思います。
消費国動向
日米欧ともに期先の買付は低調。買付は異例なほどに進んでいない。
他産地に比べて割安感のあった昨秋には非常に大きかった消費国からの引き合いは3月に入り軒並み低調なものとなっています。
スターバックスは昨年6月以降買付けを行っておらず、かつては月当たり100コンテナを越えていた積出が現在は40-50コンテナ程度にまで落ち込んでいるようです。代わりにスタバ以外の米国勢であるVolcafe Specialty Coffee、PARAGON、ROYAL COFFEEなどが積極的に動いていますがそれでもかつてスタバだけで100コンテナ/月を越えていた頃には遠く及びません。
ある輸出業者は、米国の客先向けの期先の契約が6月積みまでしかなく数量も例年の半分程度、とこぼしていました。但し4月には7月積み以降の買付が入る予定とのこと。
来年の春クロップには立派なコーヒーの実に
新植を進める生産者
マンデリンの生産量 (推定)
例年:60,000 - 65,000トン (100〜108万袋)
2010/11 CROP:40,000 - 48,000トン(67〜80万袋)
(10-9月)
総括
2011年春の収穫ピークは4-6月、輸出ベースでは5月中旬〜7月上旬(日本での受渡しは8月以降)にかけてタイト感が緩和される可能性がありますが一方では日米欧の実需はまだ買付が充分でないこと、積み遅れ契約が2,000トン程度残っていることなどから価格が緩んできた局面では買い支えられる懸念も残ります。ただし昨年末年始には開花が滞りなくあり2011年秋クロップは例年並みの収穫量が期待されていることもあることから徐々にではありますが今後は現在のような非常に厳しい価格・供給条件は緩和されていくものと考えます。